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アニメーション

想像をいざなう形と動き

資料一覧

このサイトは、2022年3月に武蔵野美術大学出版局から出版された書籍「アニメーション 想像をいざなう形と動き」にリンクさせるために作られました。
印刷された文字や図版だけでは伝わりにくい動きの面白さや視覚の不思議さ、アニメーションの原理を、YouTubeにリンクさせた作品や著者(西本企良)が制作したインタラクティブなムービーなどで紹介しています。
今後も必要に応じて、修正、更新、追加を行なう予定ですので、たまに覗いていただければ幸いです。
またお気付きの点がありましたら、下記メールアドレスまで 気軽にご連絡ください。
本サイトのメールアドレス:contact@killanim.com(西本 企良)

第1章 アニメーションの原理

1- 映画とアニメーションの原理

連続した静止画像から動きのイリュージョンを作り出す原理と、映画・アニメーショ ンのメカニカルな仕組みを紹介します。

仮現運動の原理を紹介し、C.W.ツェーラムの書籍”映画の考古学”のジョセフ・プラトーのページを回転させて、フェナキスティスコープの画像がどう動いて見えるかをシミュレーションしています。

映画でのフィルムとシャッターの連動の仕組みを紹介しています。またその原理を使って街中で見かけた長大な駅伝マラソンのバナー広告を動かしてみました。

2- 映画前史

映画が誕生するために必要であった三つの技術(映写、アニメーション、写真)それぞれの発展の歴史と、それらが統合されて映画が生まれた様子をたどります。

エジソンやリュメール、メリエスなど、映画の黎明期の作品をYouTubeにリンクさせて紹介しています。

3 - アニメーション表現の歴史

映画の誕生後、その映画の技術を利用しながら発展し、さらにコンピュータの登場にも対応したアニメーション表現を、世界の様々な作品とともに振り返ります。

アメリカで産業化され発展したコミカルなアニメーションと、小規模ながら芸術の一形態として独自の発展を遂げたヨーロッパのアニメーションの初期の傑作を紹介しています。

4 - アニメーションの技術的特性

メディアとしてのアニメーションの特性と、その特性ゆえに生まれた技法や素材の多様性について考えます。

静止画を1コマや2コマなど一定のコマ数で撮影して滑らかに動かすのではなく、撮影する静止画のコマ数を調整し、あえてギクシャクした動きのコミカルな面白さをねらった技法の説明と作品紹介をしています。

動物の形を細かいパーツに分けて、キーアクションの間をコンピュータに中割りさせて動きをつくる技法の紹介です。またそれに関連させて、複数の剛体を可動式に組み合わせて伸縮や湾曲を可能にする蛇腹構造についても触れています。

2Dアニメーションにおいて、平面に描かれたキャラクターの形をばらばらなパーツに分けて、それらを少しずつ動かしながら動きのポーズを作っていく切り抜きアニメーションの技法と、粘土などの可塑性のある素材を平面上で少しずつ形を変えながら撮影して動く画像を作っていく半立体のアニメーション作品を紹介しています。

身体のパーツを可動式にした人形によるアニメーションや可塑性のある粘土を変形させながら動きを作るクレイ・アニメーションなど、現実空間の中で立体物をコマ撮りをした作品を紹介しています。

5 - アニメーションの原理を用いた装置

アニメーションの誕生以来、その原理を利用して、現在も玩具やディスプレイとして親しまれている動きを楽しむ装置とその仕組みを紹介します。

世界で始めて動く画像を作り出した装置フェナキスティスコープの仕組みや、円形に並んだ連続画像の動きのバリエーションをインタラクティブな2Dアニメーションでシミュレーションしています。

鏡を使い、シャッターを使わずに絵を切り替えて動きを作る装置プラクシノスコープの仕組みを、実物をコマ撮りした映像や2Dアニメーションで紹介しています。

黒い縞模様の隙間(スリット)から見えている画像が、縞模様をずらすことで動いて見えるスリット・アニメーションの仕組みを、インタラクティブな2Dアニメーションで紹介しています。また関連して、「色の膨張効果」や、縞模様の色の影響でスリット内の画像の色味が変化する「色の同化現象」についても触れています。

シャッターの代わりに点滅するストロボを使った大掛かりなアニメーションの装置や、特殊なレンチキュラーレンズを使い見る角度を変えることで動きが現れる玩具など、特殊なアニメーション装置を紹介しています。

参考図書
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「映画の考古学」

著者:C.W.ツェーラム
出版社:フィルムアート社
訳者:月尾嘉男
造本:杉浦康平+鈴木一誌
(1977年)

豊富な図版を掲載して、映画が誕生する前の様々な開発者達の膨大な発明と、映画誕生初期の歴史を紹介しています。
光学的なあるいは生理学的な発明発見が、映画という一つの完成されたメディアへと収斂し、大きな産業へ変貌を遂げる様が描かれています。

目次

凡例

まえがき

エピグラフ

  • 第1章:怪しげだがまじめな先駆者たち
    • 種々の提案
    • 魔法、ファンタスマゴリア、溶暗画
    • の教
    • ベルギー授、イエズス会の神父、オーストリアの陸軍士官
    • "活動画"を使った最初のショー
    • 図版その1
  • 第2章:小さな暗箱をもった魔術師たち
    • シュルツェと硝酸銀
    • ニエプスとダゲール
    • 最初の写真芸術家パヤール
    • カロタイプ(トールボタイプ)
    • 100分の1秒
    • 写真は画家の敵
    • 盲目のプラトー
    • マイブリッジの走る馬
    • 電気式のシュネルゼイアー
    • 不吉な百万長者
    • 図版その2
  • 第3章:最初の映画フィルム
    • 失踪した発明家
    • 78件もの特許をとった男
    • 知られざるリリロイ
    • 興行師スクラダノフスキー
    • 一晩で映画を発明したルイ・リュミエール
    • 最初の喜劇映画
    • 五万フランの拒絶
    • ロシア人と初期の映画
    • 図版その3
  • 第4章:最初の映画作品
    • レイノーのショーを見物した50万人
    • 自分の装置を破壊した発明者
    • 魔術師メリエス
    • カメラとフィルムを頂戴したポール
    • トリック撮影と幽霊映画
    • 最初の宣伝映画
    • ブライトン派
    • 図版その4
  • 第5章:映画産業
    • 3,500万人の労働者が要求する娯楽
    • 大成功した肉屋の息子パテ
    • 3,000万の資本
    • メスターのマルタ十字歯車
    • カメラとして用いた部屋
    • ドイツで最初の映画カタログ
    • 結局なにが生まれたか

文献

索引

訳者あとがき




第2章 タイミング技法

1ー距離と質感

2Dアニメーションでの立体的な見せ方の工夫や、柔らかさや重さを感じさせる基本的な表現技法を説明します。

顔などのパーツの位置を変えることでキャラクターが向いている方向が変わって見える現象を紹介しています。またこれに関連して、凹面を凸面として認識してしまうホロウマスク錯視も紹介します。

空気抵抗による加速度の違いを考慮して動きを作ることで、重さが違って見えることを解説しています。

2ー基準点(ローカル座標系とグローバル座標系

アニメーション制作で、動くものと環境との関係を表現するために必要な、基準となる空間の座標点について解説します。

ローカルの座標系の中で動きを作って、それをグローバルな座標系の中で動かす仕組みを説明しています。

3ー予備動作と後動作

動きを自然に見せたり、大きな動きを強調したり、瞬間的な速い動きを知覚させるために必要な技法を紹介します。

構える動き(予備動作)と、大きな動きのあとで体勢を整えるような動き(後動作)の重要性について説明しています。

4ー動きの「ずれ」

集団の動きをより自然に見せたり、素材や環境の性質を表すために利用する時間的な遅延(タイムラグ)について具体的に見ていきます。

No.22「力の伝導」

複数の要素の結合で形が形成されている場合、それぞれの間で力が伝わって動いていくように描くことで、それらの関係や総体としての構造・質感なども感じさせる例を紹介しています。またそれに関連して、ある出来事をきっかけにその影響が伝わっていく連鎖反応による表現の面白さも紹介しています。

尻尾や髪の毛など、主体に付属しているものが、主体の動きの影響を受けて動くことで、しなやかさや柔らかさを表すことができることを説明しています。

動きの「ずれ」や「変形」を使って、物の硬さや柔らかさなどの質感を表せることを説明しています。

複数の人や動物が一斉に動いているシーンを作る時には、それぞれの動きの「タイミングのずれ」を考慮することで、より自然な動きにしたり集団の置かれた状態を表すことができます。

風にたなびく旗の動きや、旗を振り回す際の空気抵抗を例に取り上げて、薄く軽いものの動きの表現を説明しています。

5ー繰り返しの表現

もともと作画の負担を軽減するための技法ですが、機械的な繰り返しの動きだけでなく、自然現象を単純な繰り返しの組み合わせとして表すことも行われます。

機械には繰り返しの動きが特徴的です。そこには回転運動を往復運動に変換(またはその逆)する仕組みが多用されています。ここではその仕組みを紹介しています。

自然界では全く同じ動きはほぼ存在しません。しかしアニメーションでは、複雑な自然現象をシンプルな繰り返しの動きの組み合わせと捉え、表現することが行われます。

動物の実際の動きは複雑ですが、アニメーションでは走りや羽ばたきなどを、同じ動きの繰り返しとして表現することが多々あります。ここではその例とともに、動物の動きを初めて連続写真として捉えたエドワード・マイブリッジの連続写真も紹介しています。

限られた枚数の静止画で動きを表現するアニメーションでは、繰り返す速い動きを表す場合、自然に見せるための工夫が必要となります。それらの注意点をインタラクティブな2Dアニメーションで例示しています。

6ー人の歩き

アニメーションで動きを作る際に基本となる、全身運動としての「歩き」の分析と、歩く人を追って背景を動かす際の注意点などを紹介します。

背景の木々は止まっていて手前を人が歩きながら通り過ぎる場合と、歩く人は同じ位置で背景の木々が移動してカメラが人物を追いかけているように見せる場合のコマ割りによる見え方の違い、また背景の飛行機が直線的に飛ぶ場合と波打つように曲線的に動く場合のコマ割りによる見え方の違いも紹介しています。また人の動きを連続写真として捉えたエドワード・マイブリッジの写真も繰り返しの動きとして紹介しています。

9ー音響効果

映像の演出にとって大切な要素である音響の種類と、それぞれの効果について述べます。

音がなければ曖昧に見える動きに音響効果をつけた時に感じる印象の違いを紹介しています。また先に喋りの音を作り、それに合わせて動きを作る技法(prescoring)の作品、磁気テープでのアナログ録音時代に、効果音作成のために作られたいろいろな手作りの装置も紹介しています

参考図書
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「アニメーションのタイミング技法」

著者:ハロルド・ウィティーカー、ジョン・ハラス
出版社:ダヴィッド社
訳者:青木義郎
(1983年)

ジョージ・オーウェル原作のアニメーション「動物農場」(1953)の監督で、イギリス・アニメーション界のパイオニアとして活動したジョン・ハラスが、ハラス&バッチェラースタジオのアニメーターであったハロルド・ウィティーカーとともに著したアニメーションの技術書です。
古い本ですが、アニメーションを制作する上で重要なタイミング技法の基本をわかりやすく解説しています。
原書は1981年に「Timing for Animation」というタイトルでイギリスで出版されましたが、ピクサー社のジョン・ラセターは、2009年に再販されたこの本の序文で、コンピュータでアニメーションを作るようになった現代、ますますこの本の重要性が増していると述べています。("Timing for Animation -Second Edition" Harold Whitaker John Halas updated by Tom Sito published by Focul Press)

目次:

  • はじめに
  • 序論
  • グッド・タイミングとは?
  • ストリーボード
  • ディレクターの責任
  • 基本的な時間の単位
  • バーシート上の時間の配分
  • 撮影表
  • アニメーションと物の特性
  • 動きと戯画化
  • 原因と結果
  • ニュートンの運動の法則
  • 空にほうられた物体
  • 無生物体のタイミング
  • 回転する物体
  • 自在な継ぎ手を伝わる力
  • 関節を伝わる力
  • 絵のスペース取り ー 一般的な注意
  • 絵のスペース取り
  • ゆっくりした動きのタイミング
  • 早い動きのタイミング
  • 静止から運動へ、運動から静止へ
  • シングル・フレームか、ダブル・フレームか
  • 静止の時間
  • 予備動作
  • フォロースルー
  • オーバーラップ・アクション
  • 振動のタイミング
  • 重さと力を暗示するタイミング−1
  • 重さと力を暗示するタイミング−2
  • 重さと力を暗示するタイミング−3
  • 重さと力を暗示するタイミング−4
  • 力を暗示するタイミング:くりかえされる動作
  • キャラクターの反応と驚き
  • 大きさの感じを出すタイミング
  • 摩擦、空気抵抗、風の影響
  • 周期のタイミングーくり返す長さは?
  • アニメーションにおける効果ー炎と煙
  • 爆発
  • 無生物のくり返し運動
  • 歩行のタイミング
  • いろいろな歩き方
  • 遠近法的アニメーションのスペース取り
  • 動物の動きのタイミング:馬
  • 動物の動きのタイミング:その他の四足動物
  • 動物の駆け足のタイミング
  • 鳥の飛翔
  • ドライブラシ(スピード・ライン)
  • 動きの強調
  • ストロボの効果
  • 駆け足のサイクル
  • 性格表現(演技)
  • ムードの表現法
  • セリフに合せる
  • 口合せー1
  • 口合せー2
  • 口合せー3
  • タイミングと音楽
  • カメラの動き
  • ペッグ(タップ)の動かし方
  • あとがき


第3章 アニメーション表現の可能性

1ーリピート

言葉、文様、音楽など、様々なメディアで使われている繰り返しの表現を紹介し、映像やアニメーションへの応用の可能性も考えてみます。

平面的に同じ形が繰り返すパターン模様とそのパターン同士が重なった時に現れるモアレ現象、図と地がそれぞれ意味のある形でピッタリ組み合わされたM.C.エッシャーの繰り返し模様の構造を説明したアニメーション、繰り返しの表現をページをめくることで楽しめる絵本などを紹介しています。

音楽での繰り返し表現のカノン形式の構造と面白さについて、単純な繰り返しが重なる輪唱を取り上げて紹介しています。

「ラヴェルの『ボレロ』」の特徴は、同じリズムが保たれている中で、2種類の旋律が繰り返される反復的な構造にあります。はじめ一つの楽器で静かに始まりますが、同じ旋律が繰り返されるたびに楽器が加わってオーケストレーションが豊かになり、壮大なクライマックスに達した後に突然終わります。ここでは、YouTubeとリンクさせて、コンサートホールでの演奏風景とこの構造を使った映像作品を紹介しています。

ミニマル・ミュージックは短いフレーズが繰り返され、わずかな違いが加わることで響きが変化して行く音楽です。ここでは、スティーヴ・ライヒが初期の作品で提唱した「漸次的位相変異プロセス」と「漸次的 加算・減算プロセス」について視覚的に説明しています。

ここでは単に省力化やデータサイズの軽量化のためではなく、繰り返す(リピートする)ことによる表現の可能性を広げたさまざまな映像作品を紹介しています。また武蔵野美術大学での筆者の授業で、学生が制作し提出したリピート表現を使ったアニメーション作品も紹介しています。

2ーメタモルフォーゼ

あるイメージから別のイメージへ変化することで、意味が激変し、驚きとともにメッセージ性の強い表現が可能になります。様々なメディアでの変形表現の面白さを紹介します。

映画やアニメーションが発明される以前からイメージの変化を楽しむ文化は世界中にあり、それらは言葉遊びや小説、絵画、演劇(人形劇も)などでも行われてきました。ここでは静止した平面のメディアの特性を生かしたメタモルフォーゼを取り上げて紹介します。

2D.CGにおいて使用される2つの主要な画像形式ビットマップとベクター画像の違いについて、それぞれの形式で作成したアニメーションで説明しています。

3ーシンボライズされたイメージ

象徴的な表現を用いることで、普遍的な強いメッセージを伝えることが可能になります。象徴性の意味と、それを使ったいろいろな作品を見ていきます。

現実の物や状況をそのまま示すのではなく、暗示し連想させる象徴的なイメージを用いることで、一層インパクトのある表現となった映像作品とイラスト作品を紹介しています。

4ーインタラクティブな表現

コンピュータを介在させることで、ユーザーの操作に応じて反応するような表現が可能になりました。それを使ったメディアの広がりについても考えてみます。

インタラクティブな2Dアニメーションを使って形の面白さを伝える学生作品「UNIMATION」と、No.36で紹介したスティーヴ・ライヒの音楽「Come Out」の音のずれを、カエルをクリックしたりドラッグして消したりすることで確認できるアニメーション作品を紹介しています。またさまざまなインタラクティブな装置で物理現象や数学の原理を楽しく学べる展覧会「Mathematica」をデザインしたイームズ夫妻の活動についても紹介しています。

参考図書

「エッシャーの宇宙」

著者:ブルーノ・エルンスト
出版社:朝日新聞出版
訳者:坂根巌夫
(1983年)

1976年に出版された「The Magic Mirror of M.C. Escher 」の日本語訳。
エッシャーが生み出す作品は、連続性や遠近法、鏡面と空間といった構造的な面白さを追求したもので、単に形の美しさや雰囲気・感情を表そうとしたものではありませんでした。
エッシャーは、旧来の芸術からは一線を画した分析的なアプローチで作品を作り、モザイク模様の独特の絵画や二次元平面でのみ可能な在り得ない世界を生み出していきました。
この本は、エッシャーと親交のあった著者が、エッシャーが残したスケッチや話も引用しながら、その生い立ちから、作品の背景や構造まで丁寧に解説しています。
エッシャーが高く評価していたというルネ・マグリットをとりあげ、シュールリアリスムとエッシャーの作品との違いに言及している点も興味深い部分です。
両者とも視覚的な驚きに満ちていますが、マグリットの記号論的な面白さに対して、エッシャーは幾何学的、数学的な面白さと言えるのではないでしょうか。
エッシャーの画業の全体像がわかる本です。

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1976年に出版された英語版(左)とオランダ語版(右)の表紙

第一部 絵を描くことはだますことである

  • 1 魔法の鏡
  •   
  • 2 エッシャーの生涯
  • 3 分類屋泣かせの芸術家
  • 4 人生と作品に表れた対称性
  • 5 作品の発展過程
  • 6 描くことはだますこと
  • 7 アルハンブラの芸術
  • 8 遠近法の探求
  • 9 切手、壁画、紙幣

第二部 あり得ない世界

  • 1 不可能な世界の創造
  • 2 職人的技巧
  • 3 同時性の世界
  • 4 ありえない世界
  • 5 自然と数学のすばらしい造形
  • 5 画家は無限をどう描くか

あとがき

作品索引




第4章 知覚の探求とアニメーション表現

1ー形と動きの補完

人間の知覚の仕組みを研究した心理学での成果や、それを応用した錯視の不思議さ、認知の仕組みにおける動きの重要性なども紹介します。

ドイツのゲシタルト心理学者マックス・ヴェルトハイマーが体系化した人間の知覚現象における六つの性質について、具体的な例で紹介しています。

「要素群の中で、同時に共通した運動をするものは、ひとつの塊として認識される」というゲシタルト心理学の例を、インタラクティブな2Dアニメーションで紹介しています。

ゲシタルト心理学の「共通の運命」の応用例や、イタリアの心理学者ガエタノ・カニッツァが「主観的輪郭」の代表的な現象例として発表した「カニッツァの三角形」の応用例を紹介しています。

心理学者のジェームス・ギブソンが提唱した言葉で、常に変化する感覚情報から人間が感じ取る「環境の不変構造」を「不変項」と言います。この不変更についての説明と、2Dアニメーションでの応用例を紹介しています。

いくつかの代表的な錯視例を、クリックすることで変化するインタラクティブなアニメーションで解説しています。

我々の知覚は、部分的に隠された形を想像で補い全体像をイメージします。ここでは隙間から見える形で認識する文字の例を紹介しています。

物の表面に現れる「陰」と背景に現れる「影」によって、人は立体構造を感じとります。その強い効果を利用した錯視を、インタラクティブなアニメーションで紹介しています。

2ー形の単純化

対象の形を単純化することによる効果と、単純化した場合の静止画像と動く画像の違いも考えてみます。

「視覚系が物体の運動を理解する際に、可能な限り剛性(形の変わらない硬い性質)のある解釈を選択する」という剛性仮定(Rigidity Assumption)を提出し、実験で証明したグンナー・ヨハンソンの研究を、YouTubeからの映像と、実験をシミュレートしたインタラクティブなアニメーションで紹介しています。

具体的な連想を排除した単純な形態として正方形をとりあげ、動きの演出を加えることで感情や意志を持たせることができるかを、ごく短いアニメーションで試してみました。またE.マイブリッジの連続写真を単純な形に置き換えて動かす試みも紹介しています。

3ー見立てのアニメーション

あるものを別のものに見立てる、あるいはそう見えてしまう仕組みと、それを楽しむ文化について考え、単純な形態を使って、何らかの意思を持ったものに見立てたアニメーションの例を紹介します。

現実の物そっくりに作って見るものを驚かせる「もどき」の文化と、現実の物からかけ離れた物や形を使いながら元の物を連想させて楽しむ「見立て」の文化を紹介し、さらに一つの単純な幾何形態を限られた数に分解して組み立て直し動かすと、それぞれどういうイメージが表現できるかを試した「見立てのアニメーション」も紹介しています。

「見立てのアニメーション」の中から12分割のパートに手を加えて、ストーリー性のある作品に筆者が仕上げた「笑う月」を紹介しています。これは伝統的な形の遊び「タングラム」と似ていますが、動きを取り入れることで、静止画像では難しい躍動感や多様な表現が可能となります。

参考図書
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カニッツァ

「視覚の文法」

ゲシュタルト知覚論

著者:G. カニッツァ
監訳者:野口薫
出版社:株式会社 サイエンス社
(1985年)
原著:"Organization in Vision: Essays on Gestalt Perception" by Gaetano Kanizsa
(1979)

画家としても活動したイタリアの心理学者G. カニッツァが、実験を元に豊富な図解を用いてゲシュタルト心理学を解説したした本です。
ゲシュタルト心理学の祖であるヴェルトハイマーやケーラー、コフカ、さらに師として仰ぐメッツガーの論をふまえながらも、さらに独自の見解を述べています。
人間の視覚の不思議さを紹介していますが、「視知覚に関するエッセイ」とうたっているように、わかりやすい図解とともに楽しく読み進められる本になっています。

目次

訳者まえがき

まえがき

謝辞

  • 過去経験と「不可能実験」  
    • どのようにすれば対象は見えなくなるか
    • 何が手前にあり、何が背後にあるか?
    • 透明視のもたらす逆説
    • さかさまのヨーロッパ
    • 踊るダチョウ
  • ゲシュタルト心理学、九つの誤解  
    • 「ゲシュタルト」をどう訳すか?
    • 誤解その1 ゲシュタルト心理学は基本的には知覚心理学である
    • 誤解その2 ゲシュタルト理論は一種の還元主義である
    • 誤解その3 ゲシュタルト理論は生得説である
    • 誤解その4 ゲシュタルト理論は分析を拒否する
    • 誤解その5 ゲシュタルト理論は生気論である
    • 誤解その6 ゲシュタルト理論は知覚における動機の要因の影響を否定する
    • 誤解その7 ゲシュタルト心理学は過去経験の影響を否定する
    • 誤解その8 ゲシュタルト理論は規則性を対称性と等しいと考えている
    • 誤解その3 ゲシュタルト理論は問題解決が「洞察」によると考える
  • ゲシュタルト錯誤と期待錯誤
    • 刺激錯誤
    • 経験錯誤
    • 期待錯誤
    • ゲシュタルトの錯誤
  • 知覚体制化における規則性の役割  
    • 非感性的完結化
    • 局所条件の効果
    • 規則性の最大化傾向
    • 完結化の傾向
    • 図ー地の体制化と対称性
    • 現象世界における規則性の重要性
  • 偏向ガンマ運動  
    • 問題
    • 実験
    • 結果
    • 眼球運動の機能
    • 系列的提示の効果
    • 効果
  • 境界と色  
    • 色の現れかた
    • 微小構造と境界勾配の機能
    • 表面の現れかたと境界の形の効果
  • 色の同化  
    • 対比と同化
    • 陰影条件を加えた実験
    • ゆるやかな境界勾配の効果
    • 一つのパラドックス
  • 透明視  
    • 必要条件
    • 透明視の色の効果
  • 明るさの対比  
    • 明るさの誘導:関係的現象
    • 現象的所属性
  • 知覚される面の縮小と拡大  
    • 現象
    • 縮小量と非感性的に完結される領域の大きさとの関係
    • 通常の図ー地条件における非感性的完結の効果
    • 非感性的完結の結果としての現象的拡大
  • 異種輪郭  
    • 明るさの変容:異種表面形成の原因か、結果か?
    • 立体視における異種輪郭
    • 異種輪郭の機能的実在性
    • 認知的輪郭
    • その他の現象と未解決の問題
  • 視知覚における関係枠  
    • 問題
    • 実験:成人を用いた場合
    • 実験:子どもを用いた場合
    • 結論
  • 問題解決と「プレグナンツ」  
    • 問題解決は常に構造の「要求性」にしたがうか?
    • 構造の要求性は問題解決の過程を妨げうる
    • 上からの促進と下からの促進
    • 材料の構造的特徴の役割
    • 空間方向の役割
    • 表現の構造的特徴の役割
    • 考察
  • 与えられた情報を超える二つの仕方  
    • 一時過程と二次過程
    • 与えられた情報を越える二つの仕方
    • 視覚と思考

参考文献

 

邦訳文献

人名索引

事項索引




Appendix

Appendix1 テレビ映像の仕組みー走査線についてー

フィルムを使い、黒味を挟んで1コマずつ投影する映画とは違う、走査線を使ったテレビ映像の、動く仕組みについて解説します。

テレビ映像の仕組みを、単純化してシミュレートしたインタラクティブなアニメーションで紹介しています。また走査線での映像ならではの不思議な現象「ローリング・シャッター現象」も同様に解説しています。

Appendix4 ノーマン・マクラレンとNFB

映像に対する独特なアプローチで、アニメーション界に大きな影響を与えたノーマン・マクラレンと、彼の元から輩出したアニメーション作家たちの作品を紹介します。

おわりに

自己紹介と、それに関連して著者が影響を受けた人物の紹介もしています。また著者が関わってきた美術大学での授業の内容と、著者が過去に制作した作品を自主作品を中心に掲載しています。

参考図書
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「生物から見た世界」

著者:ヤーコブ・フォン・ユクスキュル、ゲオルク・クリサート
訳者:日高敏隆、野田保之
出版社:思索社
(1973年)
原著:"Streifzüge durch die Umwelten von Tieren und Menschen : Bedeutungslehre"
by Jakob von Uexküll, Georg Kriszat
(1934)

私たちは世界を、映画を見るように眺めているだけではありません。
常に環境からの刺激を知覚し理解して、次の行動を起こします。
このようにして世界を理解しているとすれば、それぞれ違った感覚器官と身体機能を備えた他の動物たちは、どのような世界像を作り上げているのでしょうか。
ユクスキュルは、それぞれの動物が知覚し作用する世界の総体が、その動物にとっての環境であるとし、「環境世界」と名づけました。
これらの研究は動物行動学の先鞭となり、翻って人間が世界をどう捉えて関わっているのかを客観的に考察することにもつながっています。

目次

訳者まえがき

まえがき

謝辞

  • 第1部 動物と人間の環境世界への散歩

    ‥‥‥ヤーコブ・フォン・ユクスキュル、ゲオルク・クリサート

    • はじめに
    • 序論
    • 第1章 環境世界の諸空間
    • 第2章 最遠平面
    • 第3章 知覚時間
    • 第4章 簡単な環境世界
    • 第5章 知覚標識としての形と運動
    • 第6章 目的と計画
    • 第7章 知覚像と作用像
    • 第8章 周知の道
    • 第9章 家(ハイム)と故郷(ハイマート)
    • 第10章 仲間
    • 第11章 探索像と探索のトーン
    • 第12章 魔術的環境世界
    • 第13章 異なる環境世界における客体としての同一主体
    • 第14章 結び
  • 第2部 意味の理論

    ‥‥‥ヤーコブ・フォン・ユクスキュル

    • 第1章 意味の担い手
    • 第2章 環境世界と居住圏
    • 第3章 意味の利用
    • 第4章 クモの巣の意味
    • 第5章 形態形成の法則と意味の法則
    • 第6章 二つの基本的な法則の橋渡しとしての意味の法則
    • 第7章 自然の作曲理論
    • 第8章 意味を耐えること
    • 第9章 自然の技術
    • 第10章 形態形成の動機としての対立符点
    • 第11章 進歩
    • 第12章 総括と結論
    • 初版への序文

新しい生物学の開拓者‥‥‥アドルフ・ポルトマン

 

環境世界の研究ー主体と客体とを含む自然研究として‥‥‥トゥーレ・フォン・ユクスキュル

本書のために‥‥‥フィッシャー版編者序

訳者あとがき

- その他の図書 -

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「動物は世界をどう見るか」(1995年)
著者:鈴木光太郎 出版社:新曜社
ユクスキュルの論を基礎に置きながら、さらに多くの動物の感覚器官を考察し、知覚の研究を深めています。最後の「シミュレーションの落とし穴」の章では、動物の環境世界像は感覚器官からの刺激を脳が総合して形づくっているので、「動物の視覚世界のシミュレーションと称するものの多くは、実際には網膜像のシミュレーションであって、知覚世界のシミュレーションではない」と述べ、人間が動物の環境世界を想像することの難しさ(不可能性?)に触れています。

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「動物と人間の世界認識 ーイリュージョンなしに世界は見えない(2003年)
著者:日高敏隆 出版社:株式会社 筑摩書房
ユクスキュルの「生物から見た世界」を元にし、「イリュージョン」という言葉を使って、動物の知覚世界や人間の環境認識、遺伝子や進化論について解説しています。
ユクスキュルの論を、わかりやすい言葉で平易に説いた入門書です。